このページの先頭



ここから共通メニュー

共通メニュー

ホーム > 2006年トリノ五輪 > 紙面から


紙面から

セネガル代表感激の出場/S大回転

<トリノ五輪:アルペンスキー>◇18日◇男子スーパー大回転

 まだ見ぬ祖国のために。アルペンスキー男子スーパー大回転で、たった1人のセネガル代表レティ・セック(24)が夢の五輪デビューを果たした。最終63番スタートから55位に終わったが、悪天候による2時間の中断を乗り越え、2連覇で3度目の優勝を飾ったチェーティルアンドレ・オーモット(34=ノルウェー)から12秒22差の1分42秒87で、見事完走した。セネガル人の父とドイツ人の母を持ち、オーストリアで里親に育てられた異色のスキーヤーが、常夏のアフリカの小国の歴史に、大きな足跡を刻んだ。

 会心の笑顔でセックはゴールに飛び込み、深々とお辞儀をした。順位はどうでもよかった。完走がしたかった。自らのルーツを確認するかのように、ゆっくりとあこがれの五輪コースを滑り降りた。「今は最高の気分。五輪は、すべての競技者にとって最高の夢だから…」。しゃく熱の大地の民の血を引く褐色の顔がほころんだ。

 セックは、セネガルを知らない。国際大会出場のため、自国以外の代表になることはスポーツの世界では珍しくはない。だが、生まれてから1度も訪ねたことのない「祖国」を代表する選手は珍しい。「自分はセネガル人より、オーストリア人だと思う。でも、セネガルに親せきはいるし、今年の夏に行くつもり。今からワクワクしているよ」と無邪気に笑った。

 幼いころから雪に親しみ、スキーを続けてきた。しかし、欧州の強国オーストリアの代表入りは不可能だった。そんな時、セネガル代表として92年アルベールビルから、アルペン競技で2大会連続出場を果たしたゲーエ・コーチから声が掛かった。「僕が世界の舞台で戦えるなんて…」。雪のないセネガルにスキー連盟を創設した大先輩の誘いに飛び付いた。03年、05年の世界選手権を経験し、W杯にも参戦した。ほとんど話したことがない実の父以上に慕う同コーチと一緒に、欧州を転戦。夢の五輪出場権をつかみ取った。

 たった1人の代表の責任を果たした。完走した56人中の55位だったが、アルベールビルの大回転でのゲーエ(66位)を上回った。未知の祖国でテレビ中継はなかった。しかし、雪国育ちの新世紀のセネガル人の足跡は、きっといつまでも語り継がれる。「半分セネガル人で本当によかった。10年のバンクーバーでも頑張るよ」。オーストリアなまりの英語が、真っ白なアルプスにこだました。

[2006/2/19/10:08 紙面から]



最新ニュース

記事バックナンバー



ここからサイドエリア

 

このページの先頭へ

ここからフッターエリア