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紙面から

条治不発…メダル逃す/Sスケート

500メートル1本目、加藤は平凡な記録に終わりガックリ(撮影・鈴木豊)
写真=500メートル1本目、加藤は平凡な記録に終わりガックリ(撮影・鈴木豊)

<トリノ五輪:スピードスケート>◇13日◇男子500メートル

 スピードスケート男子500メートルで、世界記録保持者の加藤条治(21=日本電産サンキョー)がメダルを逃した。優勝候補に挙げられていたが、1本目で35秒59の11位と出遅れた。前の組で転倒者が出て、スタートまで8分間も待たされる不運があった。その動揺からか2本目で巻き返せず、期待された金メダルどころか表彰台もならなかった。

 やはり五輪には魔物がすんでいた。お家芸の500メートルで、日本の連続メダルが6大会で止まった。加藤にとって、最悪の1本目だった。前の組で転倒があり、製氷で8分間も待たされた。何事にも動じない加藤も、思いがけないアクシデントに戸惑った。優勝候補大本命で世界最速男。「適当が一番」という楽天家も、高まる緊張に足が動かず、期待された金メダルどころか表彰台さえ逃した。

 8分間の待ち時間で、何度も乾く唇をなめた。緊張からか、顔色が青白い。最初の100メートルで9秒82と完全に出遅れた。狙っていたタイムより、0秒3近く遅かった。世界最高記録保持者が、出場した4人の日本選手の中で最も遅いスタート。世界最高のコーナリングで追い上げたが、100メートルの出遅れを取り戻せなかった。

 すべてが順調に思えた。誤算といえば、昨年末に風邪をひいたことぐらい。練習拠点にしている長野・下諏訪から実家がある山形に帰省し、体を休めた。1月の世界スプリントには調整不足で臨んだ。結果は500メートルの1本目が7位、2本目が8位。1000メートルを合わせた総合では28位に沈んだ。

 外国勢の進化は予想以上だった。鈴木恵一監督は「昨シーズンまで怖くなかった外国勢が、すごい進化を遂げている。1つもミスも許されない」と話していた。その不安が、まさに現実のものとなった。本人も気がつかないうちに、外国勢の「打倒加藤」は着々と進んでいた。加藤に引きずられるように、3大会連続のメダルを狙った清水、1本目4位と検討した及川、そして長島と、ほかの日本選手も沈んだ。

 02年12月、高校生でW杯にデビューした。その長野大会でいきなり銅メダルを獲得。それからわずか3年で、世界のトップに躍り出た。日本電産サンキョーの松下信武メンタルコーチが「大会の大きさなど、加藤には関係ない」というほど精神面のずぶとさがあった。だが、五輪という魔物は、加藤の想像を超えていた。

 好きな言葉は「一石二鳥」で、サインの横には必ず書き添える。ストイックに追い込み続ける通常のアスリートとは、全く違うタイプ。W杯で獲得した銅メダルを部屋の電気のヒモ代わりにしている。「過去のものは気にしないんです」。今大会の苦い思い出は心にしまい、加藤は次回の10年バンクーバーで雪辱を期す。

[2006/2/14/08:43 紙面から]



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